日本の牛乳事情はかなり特殊
この前、岩手の自然放牧の牧場「なかほら牧場」の牛乳を買ってみた。
値段はとても高価だけど、これがすごく美味かった。
松屋銀座と日本橋高島屋に直営店があるので、気が向いたらまた買ってみようと思う。
で、久々に美味しい牛乳を飲んで思い出したのが日本のかなり困った牛乳事情。
意外と知らない人も多いのだけど、日本の牛乳って諸外国と比べるととてもおかしな形で出回っているのだ。
せっかくなのでまとめてみる。
日本以外の大抵の国では、用途に合わせた牛乳を選択できる
日本以外のアジア・欧米各国等では牛乳を買う際
・風味は劣るが保存性に優れるロングライフUHT(超高温殺菌)牛乳
・風味に優れるが保存性に劣るパスチャライズ(低温殺菌)牛乳
というバリエーションから製品を選択することができる。
それに対し日本ではほぼ全ての製品が
・風味も保存性も劣る非ロングライフのUHT牛乳
という悪いとこどりのものとなってしまっている。
選択の余地はほとんどない。
歴史的な経緯や業界の内部事情は知らないけど、
いち消費者としてこの状況はけっこう困っている。
滅菌・密閉容器に入れれば長期保存できるものを非密閉容器で販売している現状
諸外国で売られている未開封時の賞味期限が2か月ほどのロングライフ牛乳、
日本人の感覚だと「保存料てんこ盛りなんじゃない?」と思ってしまうかもしれない。
でもこれ、中身は日本で普通に売っている牛乳と何も変わらない。
日本で主流のUHT牛乳は、きちんと密封容器に詰めれば長期保存可能なもの。
もともと長期保存可能なものを非密封容器に入れて長期保存できない状態で売っているのが現状であり、
多くの日本人は「牛乳とはそういうものだ」と思ってしまっているのだ。
牛乳の殺菌方法の違い
では、UHTとかパスチャライズとかって何なのか。
整理してみる。
・UHT(超高温殺菌)
120~130℃でごく短時間(2~3秒)殺菌したもの。
密封容器に詰めれば、未開封状態で長期間保存できるロングライフ牛乳となる。
半面、風味はパスチャライズと比較すると大きく劣る。
・パスチャライズ(低温殺菌)
100℃未満の温度でUHTより長時間殺菌したもの。
72~75℃以上で殺菌するHTSTと、63~65℃で殺菌するLTLTがある。
密封したところで長期保存はできないが、風味はUHTより優れる。
こうして比較すると、日本で主流の「密封しないUHT」というのが
いかにメリットの少ないものかわかる。
ホモジナイズ(均質化)
殺菌方法とは別の話だが、牛乳の製品差として
ホモジナイズを行うか否かというものがある。
ホモジナイズとは、脂肪を均質化する処理。
ホモジナイズを行わない(ノンホモ)牛乳は放置すると脂肪分が分離して上に溜まるが、
ホモジナイズを行うとこれを防ぐことができる。
UHTを行うためにはホモジナイズを行わなければならないが、
パスチャライズであればノンホモ牛乳を作ることができる。
※たまに「パスチャライズ=ノンホモ」という誤解をしている人もいるけど、
ホモジナイズを行うパスチャライズ牛乳も普通に存在する。
ホモジナイズの有無と風味の関係は優劣というより好みの問題だと思うが、
「牛乳を飲むとお腹がゴロゴロする現象」はノンホモのほうが起こりにくいという話もある。
所感とか
「日本人は食を大切にする」と言われることもあるけど、
乳製品に関してはかなり変な状態になってしまっていると思う。
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