昆虫初心者だけど昆虫撮影の魅力を語ってみる

昆虫初心者だけど昆虫撮影の魅力を語ってみる

気軽に始められ、とんでもなく奥の深い世界

昆虫の撮影は楽しい。
だけど、その魅力はなかなか他人に分かってもらえない。
…悲しい。

なので、昆虫撮影の魅力を初心者なりに語ってみようと思った。
  ※便宜的に「昆虫」と書くけど、蜘蛛とかの昆虫以外の陸上の節足動物も厳密には区別しない

虫が苦手?

「虫撮り楽しいよ!」と言うと、「いや、でも虫は苦手だから…」と答える方も多い。
その気持ちはよく分かる。実は、ちょっと前まで私も虫が苦手だった。
でも大丈夫。
昆虫撮影には「虫嫌い」を吹き飛ばしてしまうくらいの魅力があるのだ。
虫嫌い克服の詳細は↓
虫嫌いを昆虫撮影で克服した話|コーヒースモーク

被写体としての昆虫の魅力

多様性

地球上の生き物の中で、最も多様な種が存在するのは昆虫だそう。
なんでも、全動物種の7割くらいは昆虫なんだとか。
我々の身近にも、常にたくさんの種類がいる。
たとえ大都市のビル街であっても、ちょっとした街路樹や植え込みをよく探すと、必ず彼らの姿を見つけることができるはず。

種類が多いということは、単純にそれだけいろいろな写真を撮ることができるということ。
鳥類なんかは身近にいるものはせいぜい十数種類なので、被写体としてのバリエーションの差は歴然。

まだまだ未開拓のジャンル、というロマン

日本に生息する昆虫に限った話でも、実は記録されている種よりも未記載種(正式に分類されていない種)のほうが多いらしい。
また、そのへんに普通にいる虫でも、きちんと生態が判明しているものは意外と少ないのだとか。

これが何を意味するか。
つまり、何気なく撮った写真が新種の発見につながったり、新事実の発見につながったりする可能性があるということ。
実際にはそう簡単なことではないのだろうけど、「可能性がある」というだけでワクワクしてくる。

カメラの性能が上がり値段も安くなり、みんなが綺麗な写真を簡単に撮ることができるようになった昨今、
風景、花、鳥、電車、スナップ、ポートレート等々の定番ジャンルで他人と差別化できるような写真を撮るのはとても大変。
でも、昆虫写真の世界はまだまだ未開拓。
「他人とは違うこと」をするハードルはそんなに高くないのではないかと思う。

機材が揃えやすい

高価な機材は不要

先ほど、「カメラの値段が安くなった」と書いたが、それでもカメラはそんなに安いものではない。
高機能な上位機種になればなおさら。
でも安心。
昆虫撮影はエントリークラスのカメラで十分なのだ。
むしろ、下手に上位機種を使うよりエントリー機のほうが使いやすいかもしれない。
それはなぜか。

センサーサイズは小さめのほうが良い

高価なカメラとお手頃価格のカメラの違いとして真っ先に思いつくのがこの「センサーサイズ」。
レンズを通した光を受ける部分の面積のことだ(フィルムカメラだとフィルムフォーマットとか呼ぶ)。
これが大きい「フルサイズ」や「中判」といったカメラは、風景や人物を撮影した時に抜群の表現力を発揮する。
しかし、センサーが大きいことはメリットばかりではない。
同じものを同じ大きさで撮ろうとしたとき、基本的にはセンサーが大きければ大きいほど
「被写界深度」(ピントが合う範囲)が浅くなる(狭くなる)のだ。
そして、被写界深度は被写体に近づけば近づくほど浅くなる。
昆虫撮影はマクロ撮影になることが多いため、
下手にセンサーサイズの大きなカメラを使うとピントが合う範囲が非常に狭くなり、シビアな操作を求められることになる。

そのため、高価なフルサイズカメラより一回り小さなAPS-Cというセンサーのカメラや、
さらに小さいマイクロフォーサーズという規格のカメラのほうが昆虫撮影には使いやすい。
本格派のカメラよりセンサーが小さいコンパクトデジタルカメラや、スマートフォンなんかで撮影している人も多い。

オートフォーカス性能や連写性能は必要ない

最近のカメラは皆出来がよく、何を買ってもそれなりに綺麗な写真が撮れるはず。
なので、センサーサイズが同じ場合の上位機種と下位機種の差は
画質ではなくオートフォーカスの性能や連写の速度等でつけられている場合が多い。

でも、そのどちらも昆虫撮影にはあまり必要ない要素。
マクロ撮影時は、オートフォーカスはあまりあてにならない
(意図したところにピントが合うとは限らない)のでマニュアルフォーカスを使うのが基本だし、
一秒に何枚も連写しなきゃいけないケースはそんなにない。
なので、センサーサイズが同じラインナップのうち一番安価なカメラでも十分使えるのだ。

ただし、ピントを合わせるためのファインダーや背面液晶の性能は重要なので、
そこだけちょっと注意したほうが良いかもしれない。

いろいろなレンズで楽しめる

昆虫撮影に使うレンズは、標準〜中望遠域のマクロレンズが王道。
でも、実はそれ以外のレンズにも出番がある。

広角レンズ・超広角レンズ・魚眼レンズを使い大きめの虫にググっと寄れば大迫力の写真になるし、
虫を絡めた風景写真(ホタルが飛んでる写真とか)は広角〜標準くらいが使いやすい。
また、望遠〜超望遠レンズがあれば離れた位置の虫の撮影がやりやすい。
もう少し寄りたいという場合は、エクステンションチューブ等の接写補助器具を使うと良い。

本格的なマクロレンズはそこそこ高価だが、工夫次第で何とでもなる。
使える機材のバリエーションが多いということはそれだけ表現の幅も広いということ。
この懐の深さも虫撮りの大きな魅力。

撮影時のストレスが少ない

変な人に邪魔されない

写真趣味の負の一面についても触れてみる。

写真を撮っていると、変な人に遭遇することがよくある。
特に風景、鳥、電車のようなものを撮影する時などは、
他の撮影者の言動で不快な思いをしたことがある人は多いと思う。

使ってる機材を貶されたり、そこは自分の場所だからどけと言われたり、
聞いてもいない自慢話を延々語られたり等々…
もちろんそういう人はごく少数なのだろうけど、楽しく写真を撮っている時にそういう人に出くわすと、
せっかくの楽しい気持ちがなくなってしまう。

例えば、ちょっと前に鳥撮りをしているときにこんなことがあった。

おじさん「そこは毛虫が出るからどいたほうがいいよ」
私「え、どのへんにどんな毛虫が出るんですか?(虫撮り装備に換装しようか考えながらキョロキョロ)」
おじさん「(なんだこいつ、という表情)」
私「(そこは俺の場所だからどけ、という意味だと気づく)」

しかしながら、虫撮りではそういう変な人に出くわすことが非常に少ない(ゼロとは言いきれないが)。
好機の視線を向けられたり何を撮っているのか尋ねられることは多いが、「虫です」といえばだいたいそれで済む。

空振りが少ない

例えば、風景写真だと空の状態が期待したものでなかったり、
鳥の撮影だと鳥が見つからなかったり、自然物の撮影には空振りがつきもの。

それに対し、昆虫撮影は空振りはかなり少ない。
なんせ彼らは種類も数も多い。何も見つからないということはほとんどない。
天候さえ悪くなければ、何かしらは見つけることができる。

底なしの奥深さをもつ虫の世界

ベニイトトンボ♂
環境省レッドデータの準絶滅危惧指定種で、生息地はあまり多くないそう
科学がこれだけ発展した現在においても、虫達については分かっていないことが非常に多い。
その底なしの奥深さの片鱗に触れることができる、というのが昆虫撮影の一番の魅力だと思う。

嫌われがちな生き物ではあるが、その「嫌い」の正体は「知らない」である可能性が高い。
上で書いたように少ない投資で始められることなので、
ちょっとでも興味がある人は試してみると良いと思う。

虫嫌いを克服したい人、「写真が趣味だけど最近マンネリで…」というような人には特にオススメ。

トウキョウヒメハンミョウ
とても小さく一見ハエのような挙動だが、拡大してみるととてもきれい

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