アオメアブの捕食をじっくり観察した話

アオメアブの捕食をじっくり観察した話

急所をひと突き

体外消化の神秘

先日、興味深い光景を目撃した。
アオメアブがアオモンイトトンボを捕食していたのだ。
なかなか見ることのできない場面。
捕食開始から食べ終わって飛び立つまでの十数分間、そっと近づいてじっくり観察させてもらった。

そもそもアオメアブとは

アオメアブは、ムシヒキアブという肉食性のアブの一種。

ムシヒキアブは奇襲を得意とする虫で、近くを通った虫を凄まじい機動力で襲撃し、
鋭い口吻を獲物の急所に突き刺して捕食する。
体長は大きくても3cmくらいで、見た目も強そうではないが、実は優秀なハンターなのだ。
その性質から、「暗殺昆虫」なんて呼ばれてたりする。
大型種のシオヤアブは、スズメバチを捕食することもある獰猛さ。

このアオメアブは、シオヤアブほどではないけどやや大型のムシヒキアブ。
緑と赤の大きな目がとても綺麗な種類だ。
そんなに珍しい種類ではなく、主に水辺でよく見かける。

獲物を溶かして吸い取る

虫の食事の方法には、ものすごくざっくり分けるとムシャムシャ系とチューチュー系の2種類がある。

ムシャムシャ系は、我々人間と同じように食べ物を咀嚼して飲み込むタイプ。
バッタとかカマキリとかはこっち。

チューチュー系は、管状の口で液体を吸い取るタイプ。
チョウとかカメムシとかはこっち。

で、チューチュー系の中でも肉食のやつがよくやるのが、
「獲物の体内に消化液を流し込み、溶けた中身を吸い取る」という方法。
いわゆる体外消化ってやつ。われわれ哺乳類にはできない芸当。
タガメとかが有名だけど、実はムシヒキアブの捕食方法もこれなのだ。

今回面白かったのは、注入している消化液が泡立っている様子が観察できたこと。

口吻の周りが泡立っているのがよく分かる

捕食が進み吸い取る段階に入ると、この泡はなくなっていった。

泡がなくなっている
気になったのは、イトトンボが捕食され身体を溶かされながらもピクピクと動き、
目もぐるぐる動き表情を目まぐるしく変えていたこと。
いったいどの時点で絶命したのか、そもそも何をもって絶命したと判断すればいいのか。
興味深い。

ついでに身体の各所を観察

アオメアブはなかなか素早い昆虫で、普段はそんなによく観察できない。
今回は捕食中ということもあり、なかなか見られない部分をよく見ることができた。

まずは眉間の単眼。


ちょっと盛り上がってて後ろに毛が生えてる。

あと、平均棍。
ハエ目(双翅目)特有の、退化した後翅。


ここにあったのね。

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