コーヒーカップの選び方② -- 素材について

コーヒーカップの選び方② -- 素材について


カップ選びの記事2つめ。今回は素材について。

コーヒーカップの選び方① -- 適性サイズについて
コーヒーカップの選び方② -- 素材について  ←いまここ

素材の特性を考えて選んでみよう

コーヒーカップに使用される素材は様々。
何を選ぶかによって味の感じ方も扱い方も変わってくる。

代表的な素材として、磁器・陶器・炻器・ガラス・合成樹脂・金属・琺瑯・木の8種類について、
独断と偏見に基づき特徴を見ていく。

なお、「陶器」という言葉は陶器・磁器等の焼き物全般の総称としても使われるが、
ここでのは土ものを指す狭義の言葉として使う。

王道の「磁器」

まずは最もポピュラーな素材の磁器から。
長石や石英を多く含む素地を高温で焼成した、つるっとした質感の焼き物。
指で弾くと「キンッ」と高い音がする。
薄手の物は少し光を通すため、中のコーヒーが透けて見えて綺麗。

磁器の一番の特徴は、口当たりのなめらかさ。
特に、上質な磁器は唇に吸い付くような質感。

味の感じ方としては、香りの広がりがよく味はストレートに出る印象。

陶器と比べると強度が高いため、薄いものを作ることができるのも良い点。
吸水性もほぼゼロなため、お手入れも楽。

最もクセのない素材で、欠点らしい欠点は特に無い。
強いていえば、保温性が低めなことと、割れるので持ち歩きには向かないことくらい。
保温性に関しては厚手にすることでカバーできるが、あまり厚いと重くなってしまう。

【口当たり】
とてもなめらか

【厚さ】
極薄〜極厚まで

【強度】
○(極端に薄手のものでなければ丈夫)

【メンテナンス性】
◎(ただし、柄物はデリケートな場合があるので注意)

【保温性】
△(高くはない)

【経年変化】
×(ほとんどなし)

【オススメなシチュエーション】
・持ち歩き用でなければ万能
・厚手のものは深煎りに、薄手のものは浅煎りに

土の温かみを感じる「陶器」

ツルッとしていて土っぽくない磁器に対し、土の質感が残るのが陶器。
素地は磁器に比べると長石・石英の含有量が少なめのものを使用し、焼く温度も低め。
指で弾いたときの音は、磁器と違い低い。

陶器の良いところは、その温かみのある質感。
土や釉薬の種類によるバリエーションが豊富なため、好みのものを探すのも楽しい。
また、使い込むことで表情が変わるため「器を育てる」という楽しみもある。

実用上の利点は、保温性の高さ。
しっかり温めてから使えばコーヒーの暖かさを長時間キープしてくれる。
味の感じ方としては、苦味が減りまろやかになるのが特徴的。
反面、香りは磁器ほどは広がらない。

欠点は、強度の低さとメンテナンスの大変さ。
自重が重いため落としたらまず割れてしまうし、脆いため物をぶつければ欠けやすい。
メンテンナンスも大変で、買った直後は目止めをしたり、
その後は使用前に水を吸わせたりと、いろいろ気を使わなければならない。
水を吸うため臭いもつきやすく、乾燥が不十分だとカビが生えてしまうことも。

特に荒い土を使う萩焼や、白化粧の入る粉引きあたりはいっそうデリケートなので注意が必要。

【口当たり】
ざらざら 〜 (釉薬によっては)なめらか

【厚さ】
厚手〜極厚

【強度】
×(物によるが基本的に強くはない)

【メンテナンス性】
×(物によるがデリケートなものが多い)

【保温性】
○(高めだが多孔質な磁器よりは低い)

【経年変化】
◎(使い込むことで味わいが生まれる)

【オススメのシチュエーション】
・自宅で大切に使う器として
・基本的に深煎りのコーヒー向き

陶器のような温かみと磁器以上の頑丈さを兼ね備える「炻器(せっき)」

炻器(せっき)という言葉を聞いたことがあるだろうか。
半磁器・ストーンウェア・焼締め等とも呼ばれる、頑丈な焼き物だ。
備前焼や信楽焼、ウェッジウッドのジャスパーなどがこれに該当する。

炻器の利点は、土の温もりはありつつも非常に頑丈でメンテナンスも楽なこと。
吸水性は無いものの、特に無釉のものは使い込むうちに
表面の状態が変化するため、エイジングを楽しむこともできる。
まさに、日常の器として使うには最適な性質なのだ。

保温性は高め。
味の感じ方への影響は陶器に近いが、陶器よりはまろやかさが少ない印象。

【口当たり】
ざらざら 〜 (釉薬によっては)なめらか

【厚さ】
厚手〜極厚

【強度】
○(基本的に頑強)

【メンテナンス性】
○(特に気を使わなくても良い)

【保温性】
○(高い)

【経年変化】
○(陶器ほどじゃないが変化する)

【オススメのシチュエーション】
・日常的使いに
・どちらかといえば深煎り向き

根強いファンも多い「ガラス」

冷たいものを飲むコップの素材としてお馴染みのガラス。
通常のものは温度変化に弱いため暖かい飲み物には使用不可だが、
耐熱ガラスであればコーヒーカップとして使うことができる。
ちなみに、透明度と屈折率の高い鉛ガラス(クリスタルガラス)は耐熱ではない。
残念。

二重ガラスの断熱カップや現代的なデザインのものから、
レトロ喫茶でお馴染みのアンバーガラスやファイヤーキングに代表されるミルクガラス等の
ヴィンテージ系アイテムまで様々な種類があり、それぞれに根強いファンがいるのが特徴。

カップの素材としての特性は、ひたすらにニュートラル。
味や香りへの影響は殆どないように感じる。

欠点はやや破損しやすいこと。
強化ガラスは丈夫だが、デュラレックス等の全面物理強化ガラスは
いざ傷がついた場合に爆発して飛び散るケースがあるので注意。

【口当たり】
なめらか

【厚さ】
極薄〜極厚

【強度】
△(やや破損しやすい)

【メンテナンス性】
○(汚れは落ちやすい)

【保温性】
△(あまり高くない)〜◎(断熱カップ)

【経年変化】
×(なし)

【オススメのシチュエーション】
・磁器と並ぶ万能選手
・完全に主観だが酸味系コーヒーとの相性が良い印象

持ち歩きに便利な「合成樹脂」

メラミン樹脂やポリプロピレン樹脂等、熱に強い樹脂を使用したカップ。
非常に軽く割れることも少ないため、携帯用や子供用として使われることが多い。
保温性も高いので、アウトドアでゆっくり飲む場合は便利。

欠点は、風味にプラスの影響がないこと。
物によっては、プラスチック臭のようなものを感じてマイナスになる場合も。

あと、メラミン樹脂はホルムアルデヒドの残留がゼロではないらしいので気にする人はやめたほうがいいかも。

【口当たり】
なめらかだがプラスチック感あり

【厚さ】
薄手〜厚手

【強度】
◎(踏んだりしなければまず割れない)

【メンテナンス性】
△(悪くはないが油や臭いが残りやすい)

【保温性】
○(良好)

【経年変化】
×(劣化するのみ)

【オススメのシチュエーション】
・軽さ、丈夫さをいかしてアウトドア用や携帯用に
・割れにくいため子供用として

アウトドアでお馴染みの「金属」

アルミ、ステンレス、チタン等を使用した金属製のカップ。
基本的に薄手なので軽く、衝撃をうけても変形することはあれど割れることはまずない。
アウトドアに最適なカップといえる。
通常のものは保温性は悪いが、真空断熱のものは高い保温性を持つ。

樹脂と同様、風味に特別プラスの影響はない。
新品のうちは特に、金気臭さを感じマイナスになることもある。

【口当たり】
なめらかだが金属感あり

【厚さ】
薄手〜中厚

【強度】
◎(歪んだり凹んだりすることはあれど割れはしない)〜○(真空断熱ものは衝撃に注意)

【メンテナンス性】
○(良いが傷はつきやすいので研磨剤には注意)

【保温性】
×(通常のもの)〜◎(真空断熱もの)

【経年変化】
×(特に変化しない)

【オススメのシチュエーション】
・軽く頑丈なのでアウトドア用や携帯用に
・割れにくいため子供用にも

レトロでお洒落な「琺瑯(ホーロー)」

アルミや鉄などの表面にガラス質の釉薬を焼き付けた琺瑯(ホーロー)。
レトロでお洒落な外観が特徴。

軽量なので持ち歩きに便利だが、合成樹脂や金属と違い衝撃には弱い。
カップ自体が割れることはないが、釉薬が破損しやすいのだ。

風味に与える影響はガラスのようにニュートラル。
持ち歩き用のカップとしては口当たりが良いのが嬉しい。

【口当たり】
なめらか

【厚さ】
薄手

【強度】
△(悪くはないが持ち歩き用としては衝撃に弱い)

【メンテナンス性】
○(良い)

【保温性】
△(通常の金属製よりはマシ)

【経年変化】
×(特になし)

【オススメのシチュエーション】
・軽いのでアウトドア用や携帯用に(衝撃に弱いので注意)
・軽いカップが使いたい場合は自宅用でも

北欧雑貨で有名な「木」

フィンランドの伝統的なカップ「ククサ」で有名な木のカップ。
温かみのある木の質感が特徴。

厚手だが軽量で、アウトドアに使うと雰囲気抜群。
焚き火の横でコーヒーを飲む、というシチュエーションには最適。

ただ、メンテナンスに気を使わないとひび割れたりするのでややデリケート。
また、木の香りが飲み物の風味を邪魔したり、
ククサなんかは製造時に使用した塩分で味が変わったりと一癖ある。

【口当たり】
木の感触

【厚さ】
厚手〜極厚

【強度】
○(落としても割れない)

【メンテナンス性】
×(ひび割れないように注意)

【保温性】
○(良い)

【経年変化】
◎(使い込むといい感じに)

【オススメのシチュエーション】
・こだわり派の方のアウトドア用に


0 件のコメント :

コメントを投稿