「けものフレンズ2」の惨状から考える深刻な評価リテラシーの問題

「けものフレンズ2」の惨状から考える深刻な評価リテラシーの問題

どうしてこうなった…を考えてみた

一世を風靡したアニメ、けものフレンズの続編が盛大にコケている。
好きで見ている人もいるかとは思うのであまり悪く言うのもアレだけど、
一期の人気っぷりとの落差を考えると「コケた」と表現するのが妥当だろう。
物凄い規模の経済的損失が発生しているのは間違いない。

個人的な感想を正直に言うと、「よくこんな舐め腐ったものを世界に公開できるな」というところ。
絶望的につまらないストーリーはまあ置いといて、
カルガモの色がマガモだとか、パンダの尻尾が黒だとか、オオアルマジロが丸まるとか、
ググればすぐ分かるようなレベルの杜撰さはさすがに擁護不可。

では、こんなものが生み出された背景は何なのか。
監督交代騒動の件とか、どっちが良いとか悪いとかそういうのは置いといて、
一番気になっているのは2の木村監督の「監督なんて誰がやっても同じ」という旨の発言。

無印は低予算ではあるが、よく見ると非常に作りこまれている。
ところが2を見る限り、2の制作陣はその良さを全く再現できていない。
でも、少なくともやろうと思った段階では「簡単にマネできる」と思ってしまったよう。
なぜなのか。

これ、この件に限らずかなり根深い問題だと思っているので、少し掘り下げてみる。

ものを評価する能力「評価リテラシー」

物事の良し悪しを判断するためには、それなりの能力が必要である。
例えば、将棋の駒の動かし方を覚えたばかりの人が
プロ棋士同士の対局を見てどちらが優勢かを判断することはできない。

プロ並みの実力をつけないと…、とまでは言わないが
評価のためにはある程度の知識と経験が必須。

こういった、物事を評価するための能力を勝手に「評価リテラシー」と呼んでいる。
言葉として正しいかどうかは知らん。

評価リテラシーが重要な理由 ⇒ 凄い人の技術は一見簡単そうに見えてしまう

評価リテラシーについて語るうえで、とても大切なことが一つ。
実力のある人の技術ってぱっと見すごく簡単そうに見えてしまう場合が多い、ということ。
評価リテラシーが低いと、実力者を軽んじてしまうことになる場合があるのだ。

例えばソフトウェアの世界。
凄い人の書いたソースコードって簡潔で一見すぐ書けそうに見える。
それに対し、ダメな奴が書いたものは一見凄そうでも無駄が多く、
本気でリファクタリング(動作は変えずにソースコードをきれいにすること)をすると
量が数分の1くらいになってしまう。
ところが、悲しいかな評価する側の評価リテラシーが低いと、
前者は「簡単そうだから」と評価されず、後者が「すごそうだから」と高評価になってしまい、
結果低品質なシステムが出来上がり保守費用が膨れ上がる、といったことがよくある。
評価するための能力ってとても大切。

もっと身近な話でいうと、熟練の職人さんの動作。
あれ、すげー簡単そうに見える場合もあるんだけど、
実際マネしようとすると常人には再現が不可能だということが分かる。

この「一見簡単そうだけど実は難しいことをマネしようとして失敗」
というパターンを素でやってしまったのがけものフレンズ2。

どういうことかというと、無印って全てがすごく自然なのだ。
登場人物の動き、会話、話の流れ等々…すべてが違和感なくスッと入ってくる。
声についても、声優さんの個性にキャラクター側を寄せることで
単純な上手い下手を超えた次元で生かしている。
動物の習性とかについても、わざとらしくなく自然な形で物語に組み込んでいる。
あまりに自然すぎて視聴者に与える印象は「普通」となってしまう。
その一見「普通」で人を惹きつけているのが凄いところ。

一方、2はグラフィックを奇麗にし一見それっぽく作っているものの、「自然さ」からは程遠い。
例えば、サーバルの「すっごーい」というセリフ。
無印ではとても印象的なセリフではあったけど、使われる場面は多くはない。
それに対し、2はすっごーいbotと揶揄される程度には「すっごーい」を連呼。
表面的な部分をマネたものの、本質は再現できていないことがよくわかる。
そして、動物について真面目に取材をしていない故に冒頭に挙げたような初歩的な間違いも連発…と。

深刻な評価リテラシー問題

この評価リテラシーの問題、本件に限らず結構深刻なケースが多い。

例えば、ちょっと前に経産省と内閣府で参与を務めていた齋藤ウィリアム浩幸氏。
自称サイバーセキュリティ専門家の嘘つきおじさんだったわけだけど、
偉い人たちの評価リテラシーの低さゆえに重要なポジションに就いてしまった。

また、もっと小さなところで言うと、Q&AサイトやSNS上のマウンティングする人々。
上級者の悩みに対し、明らか質問者より実力が下で相手の能力を測れない回答者が
入門者向けのアドバイスを何故か上から目線でしている、というのをよく目にする。
あれ、見てるだけで恥ずかしくなるからやめて欲しい。
  ※誤解のないように言うと、自分より実力が上の人へのアドバイスすること自体は良いが、
     上から目線で頓珍漢な低レベルのアドバイスをするのが問題

余談ではあるが、近年の日本の技術の衰退にもこの問題が深く絡んでるのではないかと思う。
技術を持った人が減っているというより、
「技術を正当に評価できる人」が激減しているのがやべー。

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