準備ができたら、いよいよ焙煎
いよいよ、本題の焙煎にとりかかろう。
まず、最重要事項の「焙煎度」を決める。
浅煎りとか深煎りとかよく聞く言葉だけれども、
そういったコーヒーの焼き加減のことを「焙煎度」という。
焙煎度の選択は、コーヒーの焙煎において非常に大きなウエイトを占める。
焙煎度が変わると何が変わるのか
どんな産地のコーヒーであれ、焙煎度が変わると概ね次のような形で性質が変化する。
【苦味】
浅煎りでは弱く、焙煎が深くなるほど強くなる
【酸味】
浅煎りでは強く、焙煎が深くなるほど弱くなる
【甘味】
焙煎が深いほうが感じやすくなることが多い
【豆の硬さ】
浅煎りでは硬く、焙煎が深くなるほどもろくなる
【ドリップ時の膨らみ】
浅煎りや超深煎りではあまり膨らまず、中深煎り〜深煎りあたりが一番膨らみやすい
【抽出温度】
浅煎りでは高温抽出、深入りではやや低温の抽出が適する
※ただし、好みによる差はあるため一概にはいえない
【焙煎時の重量変化】
深煎りになればなるほど、焼きあがった豆の重量は軽くなる
【焙煎時に発生する臭い、煙、焙煎機の汚れ】
深煎りのほうが臭い、煙が多く出るし焙煎機が油で汚れる
【ドリップ時の膨らみ】
浅煎りや超深煎りではあまり膨らまず、中深煎り〜深煎りあたりが一番膨らみやすい
【抽出温度】
浅煎りでは高温抽出、深入りではやや低温の抽出が適する
※ただし、好みによる差はあるため一概にはいえない
【焙煎時の重量変化】
深煎りになればなるほど、焼きあがった豆の重量は軽くなる
【焙煎時に発生する臭い、煙、焙煎機の汚れ】
深煎りのほうが臭い、煙が多く出るし焙煎機が油で汚れる
焙煎度の名前を覚えよう
コーヒー豆を加熱すると、以下のような順で状態が変化する。
①(生豆)
②(生焼け)
③ライトロースト
④シナモンロースト
⑤ミディアムロースト
⑥ハイロースト
⑦シティロースト
⑧フルシティロースト
⑨フレンチロースト
⑩イタリアンロースト
⑪(消し炭)
③〜⑩の8段階が、一般的に飲用するコーヒーの焙煎度。
生豆をそのまま煮出すような飲み方もあるらしいが、一般的ではない。
ここでちょっとした罠。
焙煎度の呼び方のイメージと実態には、少し違いがある。
「ミディアムロースト」は中煎りではなく結構浅めの焙煎で、
「ハイロースト」もぜんぜん深煎りではない。
このあたり、歴史的背景があるらしいけど説明は割愛する。
なお①、②、⑪は一般的な呼称ではなく、私が勝手に呼んでいるだけ。
焙煎度に明確な基準は存在しない
厄介なことが一つ。
焙煎度の各段階の呼称は概ね統一されているものの、
それぞれの名前がどんな状態を表すのかというところは、人によって微妙に異なるのだ。
ハゼ(コーヒー豆が焙煎中にパチパチ爆ぜること、英語だとcrack)
を基準とした分け方が一般的だけど、焙煎方法(主に温度の上げ方)が違えばハゼのタイミングは異なる。
※ハゼについては後述する
焼き色を基準として考える方法もあるが、これまた豆表面と内部の熱の通り方によって結果がマチマチになる。
焙煎前の生豆の重量と焙煎後の重量を比較し、どれだけ減少したかで考えるという方法もある。
これは前2つと比べて焙煎方法の影響を受けづらいが、今度は生豆にもともと含まれる水分量の違いが影響してくるため、やっぱり確実ではない。
前回、「コーヒー豆のグレードは生産国によって異なるので参考程度」と書いたが、
焙煎度についても、「人によって微妙に異なるので参考程度」と考えたほうが良い。
私の焙煎度の定義
私の焙煎度の分け方は以下の通り。
このブログ内では、この定義を前提としている。
・分類方法 → ハゼの状況によって分類する
・ライトロースト → 1ハゼの直前、超浅煎り
・シナモンロースト → 1ハゼの始めあたり、浅煎り
・ミディアムロースト → 1ハゼの真ん中〜後半、中浅煎り
・ハイロースト → 1ハゼの終わり際〜2ハゼの直前、中煎り
・シティロースト → 2ハゼ始めあたり、中深煎り
・フルシティロースト → 2ハゼ始めから数十秒おいたあたり、深煎り
・フレンチロースト → 2ハゼ真ん中あたり、超深煎り
・イタリアンロースト → 2ハゼ後半〜終わり際、超々深煎り
手網や鍋等の保熱性の低い器具で焙煎する場合は、
熱ムラによって豆表面側の反応が先行して進むことがある。
その場合、実際の焙煎度はハゼの状態や表面の色での判断より1段程度浅くなることも。
焙煎度を決定しよう!
では、以上のことを踏まえて焙煎度を選択しよう。
まず、最初に確認したいのは購入した生豆の性質。
豆によって浅煎り向きのやつ深煎り向きのやつがあり、そこを外すとあまり美味しいコーヒーにはならない。
次に考えるのが好み。
しっかり苦いコーヒーを飲みたいなら深め、
酸味のあるコーヒーを飲みたいなら浅め、
エスプレッソで使いたいなら超深入り。
購入した生豆の性質上、許容できる範囲で焙煎度を調整しよう。
さらに、重要なのが焙煎方法。
手網や鍋といった保熱性の低い焙煎では、浅めの焙煎で美味しく焼くのはけっこう難しい。
挑戦する場合、失敗は覚悟すること。
どうしても焙煎度が選べない場合、シティローストをオススメする。
ドリップで抽出するという前提なら大抵の豆はシティローストで美味しく飲むことができるし、
多少タイミングをミスって深くなったり浅くなったりしても大外しはしにくい。
迷ったらシティロースト。
焙煎時の豆の状態変化を覚えよう
焙煎度が決まったら焙煎にとりかかることができる。
ただ、焙煎はなかなか忙しい作業。
やってる途中に手順を確認するのは難しい。
なので、始める前に流れを覚え簡単にイメージトレーニングしておくと良い。
焙煎の流れ
前提:焼きムラを防ぐため、焙煎中は豆を常に撹拌すること
①豆を火にかけてしばらくは、ゆっくりと豆の水分が抜けていく。
豆の表面の色もあまり変化しない。
この時点ではあまり状態変化がないので不安になるかも知れないが、焦らないこと。
②豆の水分が抜けてくると、徐々に豆に色がついてくる。
このあたりから、本格的に豆に火を通していく作業となる。
臭いはまだコーヒーの香りではなく青臭い感じ。
③ある瞬間、豆が「ポッ、ポッ」という低い音を出して爆ぜ始める。
これがいわゆる「1ハゼ」。
このあたりから、香ばしい香りが出てくる。
④1ハゼはだんだん激しくなり、しばらく後におさまる。
つかの間の無音の状態の後、「ピチッ、ピチッ」という高い音をたてて爆ぜ始める。
これが「2ハゼ」。
豆の種類や状態、焙煎方法によっては1ハゼと2ハゼの間がほとんどなかったり、
1ハゼの終わり際に重ねて2ハゼが始まったりするので注意。
2ハゼあたりから、発生する煙の量が急増する。
2ハゼ発生後、豆の状態は秒単位で急変するため気を抜かないこと!
⑤2ハゼも1ハゼと同じようにだんだん激しくなり、やがて終了する。
2ハゼ終了後ほんの少し経過すると豆は完全な消し炭になる。
イタリアンローストを狙う場合は要注意。
③〜⑤の任意のタイミングで豆を焙煎器具から取り出し、平ザルに広げる。
狙った以上に焙煎が進まないように、取り出した豆はすぐにうちわやドライヤーの送風機能等で風を送って冷やす。
焼きあがったばかりの豆はとても高温!火傷に注意すること!!
焙煎時の火加減について
焙煎時の火加減は、一定では上手くいかない場合が多い。
ではどうするのかというと、これは使用する器具やその人の考え方、
焼く豆の種類等によって大きく異なる。
一例として私の考え方を紹介する。
上記の流れの①の段階では、やや弱火でじっくり豆を加熱する。
②の段階になったら火を強める。
1ハゼが発生したら火を少し弱め、その後はハゼの進行に応じて調整する。
※2018/4/16追記
最近は、①の段階を高火力で行い②で火を徐々に弱めるように変えてみた。
安定させるのが難しいけど、こっちのほうが好みの味に焼けるかも。
※2018/4/16追記
最近は、①の段階を高火力で行い②で火を徐々に弱めるように変えてみた。
安定させるのが難しいけど、こっちのほうが好みの味に焼けるかも。
なお「火加減」という言葉を使ったものの、手網焙煎の場合は
火の強さではなく火と手網の距離で調整したほうが融通が利く。
実際に焙煎、の前に煙対策
イメージトレーニングができたらいよいよ焙煎に入ろう。
…とその前に、焙煎で発生する煙の対策をしておこう。
焙煎を行うと、白い煙がもくもくと出る。
特に深めの焙煎を行う場合、無対策だと視界が白くなるレベル。
なので、換気はしっかりと。
さらに忘れてはならないのは火災報知機の存在。
煙を感知するタイプの火災報知機は、間違いなく誤作動する。
なので、煙感知タイプの火災報知機が設置されている場合、
電池を抜く、ビニール袋を被せる、等の対策を行おう。
焙煎終了後は忘れず元の状態に戻すこと!!!
いよいよ焙煎本番
いろいろと下準備が完了したら、いよいよ焙煎を行う。
焙煎方法は器具によって異なるが、だいたいは上で書いた「焙煎の流れ」の通りになるはず。
重要なのは、焼きムラができないよう常に豆を動かすこと。
そして、火傷や火事には十分に注意すること。
焼きあがった豆を味わう前に、ちょっと我慢
焙煎終了後、さっそく焼きたての豆を淹れて飲みたくなるかもしれない。
ところが、実は焼きたてほやほやのコーヒーってそんなに美味しくない場合が多い。
なので、焙煎直後の豆を飲んでみて美味しくなくても失望しないこと。
我慢して数日置くと、びっくりするくらい美味しく変化するはず。
ではどのくらい置けばいいか、というところだけど、
これは焙煎方法や保存環境、その他諸々の要因によって変化する。
一般的には3〜5日くらい置くとされる場合が多い。
私の経験上だとに、暑い時期は3日くらい、寒い時期は1週間くらいで飲み頃になる。
焼きあがった豆が美味しくなる変化は一瞬のできごとだけど、
味が劣化するスピードはそれほど速くないので、どうしてもタイミングを外したくない場合はとりあえず1週間後に飲むと良い。
これなら、最高のタイミングを逃すことはあっても大外しはしない。
特に一度に焙煎した量が少ない場合は、飲み頃を迎える前に豆がなくならないよう注意しよう。
次のステップへ
一度焙煎をやってみると、違う焙煎度を試してみたいとか、違う産地の豆を焙煎士てみたいとか、
ここをもっと工夫したいとか、もっと違う器具で焙煎してみたいとか、いろいろ挑戦したいことが出てくるはず。
焙煎はとても奥深い世界。いろいろ試してみよう。
まとめ
今回で、全4回の「気軽に始めるコーヒーの自家焙煎入門 」は終わり。
さらっとではあるけど、一般家庭で行う焙煎で必要な事項についてだいたい触れられたと思う。
少しでもこれから焙煎を始めようと思っている方の参考になれば、とても嬉しい。
0 件のコメント :
コメントを投稿