「ググレカス」の死語化 -- ググってもまともな情報が得られない世界

「ググレカス」の死語化 -- ググってもまともな情報が得られない世界

荒廃する日本語インターネットの世界

ふとした拍子に考えてしまったインターネットに関する話。

先日、カシミヤのセーターがセールにかかっているのを発見して買おうかどうか迷っていた。
「このセーターは確かに安い。でもカシミヤって扱い大変そう。
  そうだ、ウールと比較したときのカシミヤのメリットってなんだろう」
そう考え、「カシミヤ メリット」というキーワードでググってみた。

で、検索結果の2番目に表示されたサイトを見て脱力。

> カシミヤもウールも元は山羊の毛なので、大きな分類ではウールの1つとも言えます。

ええ…(困惑)

言うまでもないが、ウールは羊毛で、カシミヤはカシミヤ山羊の毛。
一応、広義で獣毛全般を「ウール」ということもなくはないが、
一般的に「ウール」といえば羊毛だ。
たまに山羊(やぎ)を「やまひつじ」と読んでしまう人がいるが、これを書いた人もそんな感じか。

Googleの検索上位に表示され、いかにも「良い情報を発信してます」と言わんばかりのつくりのサイトで、
こんな小学校の家庭科の授業をまともに受けていれば分かりそうなデタラメな情報を発信しているのはどうしたものか。
  ※そもそも、この検索ワードがイケてないという点はおいておく

で、ふと思った。

そういえば、最近「ググレカス」って言わないよな、と。
※ググレカス=Googleで検索すればすぐに分かりそうなことをわざわざ質問する人に対し使う言葉

なんでだろう。ちょっと考えたらすぐに答えは出た。
そうだ、ググってもまともな情報が出てこないんだ。

最近、(検索ワードにはよるが)日本語でググったときの検索結果の上位は、以下のもので埋め尽くされている。

  ・ネットでちょっと調べて書いた知識で書いたような低品質なキュレーション
    ➾キュレーション全てが悪いとは言わないが、あまりにも質の悪いのが多すぎる
        例えば、喫茶店にロクに言ったことがない人がまとめたことが丸わかりなオススメ喫茶店集とか

  ・上の「カシミヤもウールも元は山羊の毛」のようなデタラメを書いたサイト

  ・ヤフー知恵袋のようなQ&Aサイト
    ➾「ヤフー知恵遅れ」などと揶揄されることもあるが、まだしも良い情報に出会える可能性が高い

  ・怪しい詐欺通販サイト
    ➾最近やたら良く見るよねこれ

日本語の情報はあまりにも使い物にならないので、
本当に知りたいことがある場合は英語で調べるようにしているのが現状だ。
英語苦手だけど。

なぜこんなことになったのか。
考えたことを書いてみる。

「生きた情報」が減り続けている

インターネットというメディアの一番のメリットは何か。
それは誰もが情報を発信できること。
誰が何を考えた、何を感じた、という情報がみんなで共有できる。
理想では、これによって「集合知」ができあがる…はずであった。
しかし、そうはいかなかった。

誰かが自分自身で考えたり感じたりしたこと、これは「生きた情報」である。
多少稚拙だろうが勘違いがあろうが言葉足らずだろうが、「生きた情報」には一定の価値がある。
特に、その人が好きなものについての情報ならとても良い。
みんな違う脳で考えたことなので、集合知の構成要素たりえる。

それに対し、聞きかじり受け売りを横に流していくようなものは、何も価値のない「死んだ情報」になりやすい。
いくらパッと見が整っていようが文章が綺麗だろうが「死んだ情報」はゴミでしかない。
その物事が好きでもなんでもない人間が、小遣い稼ぎのためにいい加減にまとめているものなんかは特にダメ。
他所のコンテンツを丸ごと持ってきた上に誤りを追加しているようなのとか目も当てられない。
ゴミをいくら積み上げたところで集合知にはならない。
※ただし、キュレーション全てが悪ではないと思っている。
    公式情報では見づらい情報を分かりやすくまとめていたり、
    競合製品のスペック比較を分かりやすくまとめているようなのは良いキュレーションだ。

情報の横流しで金が稼げるため、二次情報・三次情報だらけになった

十数年前まで、インターネットは「何かを好きな人がその物についての情報を発信する場」として機能していた。
発信される情報は玉石混交。
極めて低品質なものや有害なデタラメもあったが、その中には間違いなく「玉」があった。
※「昔は良かった」のような懐古も多少は含まれているだろうが

ところが近年、インターネット広告が有用なものという認識が広がり状況が変わる。
情報発信自体ではなく、広告収入を主目的とする発信者が急増したのだ。

どんなに発信している情報が低品質であろうが、アクセス数が多ければ金になる。
アクセス数を稼ぐためには、別に発信している情報が高品質であったり一次情報であったりする必要はない。
ここでは、「発信する情報の質を良くしよう」というインセンティブは働かない。
中身になるべく手間をかけずいい加減にググって済ませ、SEO対策に注力するほうが効率が良い。

かくして、情報源であったはずのGoogleの検索結果は不毛なSEO戦争の場と化し、
ググってもまともな情報が得られないため「ググレカス」も死語となった。

NAVERまとめに載っているような基礎的、表面的な情報は洪水のごとく出てくるのだが、
ちょっと深い内容になると本当に全然出てこない。
「情報源は複数」の原則に従おうとしても、ほとんどが二次情報・三次情報かつ元ネタが同じな場合が多いのでどうにもならん。

※こんな状況なので、低品質な情報が多く「ヤフー知恵遅れ」などと揶揄されていたQ&Aサイトも
    「自分の言葉である」という理由で相対的に質の良い部類の情報になったと思う

さらに最近。
「アフィは稼げない」という理由で手を引く人が多くなった。
そういう人達は仮想通貨に行ったのかな?

が、一度荒れ果てた検索結果は回復しない。
荒廃した日本のインターネットの世界は今後どうなってしまうのか。


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